小久保よしあき氏(ボイトレエンタメユニットBRIDGE はる先生)からSVCライセンスを付与された、科学的ボーカルコーチの“ボイトレ王子”こと、エレ様です。
SVCのライセンスを取得する際に、ウン十万円掛けて学んだ全知識、いやそれ以上の情報を、こうやってコラムとして無料での公開に踏み切りました!

ミックスボイスを練習しているのに、いつまで経っても発声できずに悩んでいる方はたくさんいらっしゃいます。
因みに通常、原因は一つだけでは無く様々な要因が複合的に絡んでいるので、一つずつ改善していく必要があります。
この記事を最後まで読んで、是非ともミックスボイスの自己練習に役立ててくださいね!
原因①声量を出し過ぎ問題
先ず圧倒的に多いのがこれです、声量を出し過ぎているせいでミックスボイスの声帯振動へ移っていけない。

マイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダー等のスーパースターを育成したことで知られるセスリッグス氏は、日本人シンガー達の発声に苦言を呈したそうです。
「日本人は何でみんなあんなに叫ぶのかね?」
https://truevoiceoffice.com/hightonevoice-hint1/

ミックスボイスとは科学的に、地声・裏声とは異なる中間の声帯振動パターンであり、声帯が平行に振動することが立証されています。
よって、どんなにミックスボイスを鍛えたとしても、地声のパワーに追いつくことは無いのです。
ということは、ミックスボイスの適切な声量で歌う為には、低音域の地声から声量を抑えてミックスボイスの声量に寄せていかないといけない訳です。
ですが皆さんココに気付かれていないので、地声の声量にミックスボイスの声量を合わせようとしてしまい、いつまで経ってもミックスボイスが発声できない状態から脱却できずにいるのです。

「声量お化け」なんて呼ばれている歌手の方々は、歌手の中でも例外的で特別な存在なのだということを肝に銘じましょう。


原因②最初から地声ミックスを求めている
次に多い原因がコレです、はじめから地声感の強いミックスボイスを出そうとするあまり、ミックスボイスの声帯振動へと移っていけないパターンですね。
知らない方の為に少し解説すると、ミックスボイスというのは声帯の厚みをコントロールすることで、地声寄りにしたり裏声寄りにしたりとバランスを調整することが出来ます。
- 地声寄りのミックスボイス→地声ミックスと呼ばれる
- 裏声寄りのミックスボイス→裏声ミックスと呼ばれる
そこで力強い歌声に憧れている人が多い為か、自分が求めている声は「弱々しい裏声よりのミックスじゃないんだよ」という想いから、いきなり強いミックスボイスを試行錯誤してしまうのでしょう。

ですが物事には順序というものがあります。
裏声側から柔らかい裏声ミックスを構築していき、低音側の地声と裏声ミックスのパワーバランスを揃えていくことが、声の一本化へは必要不可欠です!

更にもう少し踏み込んだ話をすると…実は地声ミックスで発声できる音域は個人差があり、アナタが求めている音高で地声ミックスを発声できるとは限らないのです。
BRIDGE表のセカンドブリッジと呼ばれる音域から、地声ミックスで発声するのが難しくなってくる音域です。
地声で発声するのは「鬼門」と言われる音域ですが、ミックスボイスでも地声的に発声するのは難しいということです。


原因③倍音が抜けた声によりミックスボイスが出来ていないと勘違い
ミックスボイス(ヘッドボイス含む)が高音を発声する為に最も適した声帯振動の状態であることに間違いはありません。
ですが、高いキーに適した歌声の持ち主かどうかは声帯のスペックに依存します!つまり、元々の地声が低い人はミックスボイスを駆使しても適正キーは低くなるということです。

福山雅治だってミックスボイスで歌っていますが、地声が低いのであのキーなのです。
では、ミックスボイスを駆使して「適正キーより高いキー」で歌った場合どうなるでしょうか?
結論から言うと、倍音が抜けてしまい地声トーンには聴こえづらい(裏声トーンに聴こえやすい)のです。
倍音を詳しく説明するとなると、周波数のお話になってくるので大変ややこしい為、ここでは割愛しますが…声における倍音を平たく言うと、「地声に聴こえる成分」です!

倍音が多い声とは地声的なトーンの音色(管楽器で言えばサックス)、倍音が少ない声とは裏声的なトーンの音色(管楽器で言えばフルート)ということです。
髭ダンの「Subtitle」のサビを色々なキーで歌っているこの動画をご覧ください、最後の原キーが最も倍音が抜けていることが確認できると思います。
実はミックスボイスが発声できているにも関わらず、歌手本人の歌声と比較して倍音が少ないために、「ミックスボイスが出来ていないと勘違い」している可能性も大いにありえる訳です。


まとめ
ミックスボイスが発声できない原因のTOP3について解説させて頂きました。
「声量」や「パワー」、「倍音」といった概念に囚われすぎると、いつまで経ってもミクスボイスの声帯振動へと移行ができないという状態からの脱却が難しいです。
急がば回れ!先ずは囁(ささや)くような音量からスタートし、柔らかい裏声ミックスの習得を目指してみてください。