小久保よしあき氏(ボイトレエンタメユニットBRIDGE はる先生)からSVCライセンスを付与された、科学的ボーカルコーチの“ボイトレ王子”こと、エレ様です。
SVCのライセンスを取得する際に、ウン十万円掛けて学んだ全知識、いやそれ以上の情報を、こうやってコラムとして無料での公開に踏み切りました!
ミックスボイス・ベルティングに関する記事は、これまでに山ほど書いてきました。
そこで今回の記事は、ミックスボイス・ベルティングを形成する為に意外と見落としがちな、「母音」にフォーカスを当てた解説となっております。
どちらかと言えば、ミックスボイスやベルティングが「あと一歩で出来そう」、といった方に向けた記事の内容です。
発声(地声・裏声)と母音の関係
簡単におさらいした上で、少し補足させて頂きますと…
母音の特性というモノがありまして、実は地声に成りやすい母音・裏声に成りやすい母音、そしてミックスボイスに成りやすい母音が存在するのです。
この表ですが、舌の位置(高低・前後)を示しています。
- 「ア」:舌の高さが低くて真ん中
- 「イ」:舌の高さが高くて前
- 「ウ」:舌の高さが高くて後ろ
- 「エ」:舌の高さが中間で前
- 「オ」:舌の高さが中間で後ろ
表に記載のように「開口度」に着目すると…
- 「ア」:口を大きく開く母音
- 「イ」:口を小さくすぼめる母音
- 「ウ」:口を小さくすぼめる母音
- 「エ」:口をまあまあ開ける母音
- 「オ」:口をまあまあ開ける母音
であることが解ります!実はこれ、発声においてめっちゃ重要なんです。
- 舌が高いほど裏声に成りやすく、逆に低いほど地声に成りやすい
- 舌が前にあるほどトーンが明るくなりやすく、逆に後ろにあるほど暗くなりやすい
- 口を大きく開けるほど地声に成りやすく、逆に狭いほど裏声に成りやすい
歌詞によって、歌いづらい母音があるのはその為かぁ…。
ミックスボイス・ベルティングを母音から読み解く
母音のロジックを理解して頂いたところで、ミックスボイス・ベルティングを母音の観点から読み解いてみましょう!
ミックスボイスと母音の関係
先ず、ミックスボイスというのは、ザックリ言うと「地声と裏声の中間の声帯振動パターン」です。
ということは、ミックスボイスに成りやすい母音は、舌の高さが中間の「エ」「オ」である、と考えることが出来ます。
因みに、日本語にない「ə(シュワー)」という母音こそが、高低・前後の全てが真ん中にある、最もバランスがいい母音です。
ベルティングボイスと母音の関係
次にベルティングですが、声帯を厚いまま短縮することで、ミックスボイスよりも太いトーンの高音を出す技術です。
ということは、声帯の厚さを出しやすい=地声に成りやすい「ア」母音が最も効率がいいと考えることが出来ます。
「ア」母音だと地声の張り上げに成っちゃうって場合は、日本語にない「AH(アとエの中間)」母音を利用すると良いですよ!
母音のロジックを利用している歌手の実例を紹介
では最後に、実際に母音のロジックを上手く利用することで、ミックスボイスやベルティングを出しやすくしている歌手の方々の発声を解説させて頂きます。
ミックスボイスを出しやすくしている歌手(JINHO)
韓国で大人気のグループ、PENTAGONのメンバーであるジノが、GLAYのHOWEVERをカバーした動画です。
口の開け方に注目してみてください。
例えば、3:26~「あなたを彩る全てを抱きしめて」「ゆっくりと歩きだす」とか、全体的に口を大きく縦に開けていることが確認できます。
母音を狭く(口を横に広げない)することで、ミックスボイスを保ちやすくしているわけです。
口を横(ワイド)に広げてしまうと、ミックスボイスから地声に落っこち易くなるからです。
ベルティングボイスを出しやすくしている歌手(Loren Allred)
「Never Enough」の大ヒットで知られる世界的歌姫、ローレン・オルレッドの動画です。
3:32~「For me」という歌詞ですが、「me(ミィ)」を「may(メェイ)」と発音していることが聴き取れます。
ここで母音表を思い出してください。
「エ」母音は「イ」母音と同じ前舌で、且つ「イ」よりは低い母音です。
母音間の距離的に、「イ」に最も近い距離の母音でパワーを込めやすい母音が「エ」である為、母音を「エ」に開くことで、ベルティングし易くしているわけですね!
勘のいい方はもうお気づきでしょうが、「ウ」母音でベルティングしたければ、こっそり「オ」母音に開けばいいということです!
まとめ
ミックスボイスやベルティングに関する記事は、これまでにも散々書いてきたので、今回は「母音」にフォーカスした記事を執筆してみました。
母音によって、地声に成りやすい・裏声に成りやすい等の特性がある為、それを上手く活用することで、発声の難易度を下げることが可能だということがお判り頂けたなら幸いです。
アナタもこの母音のロジックを積極的に取り入れることで、発声練習のクオリティーが上がること間違いなしです!