ボイトレ相談箱 Q＆A

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簡単な質問への回答は「ショートQ&A」で、複雑な質問への回答はコラムで回答させて頂きます。

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ショートQ＆Aで即効解決

地声でハイトーンが出るならミックスボイスは不要？

例え地声でハイトーンが出せたとしても、ミックスボイスは不可欠な技術です。何故なら地声で歌えば負担が大きく、声枯れ程度で済めばいいですが、声帯結節やポリープなどのリスクが高まり、最悪の場合だと手術が必要になります。

それになにより、地声で張り上げた発声では押しっぱなしの歌になり、物理的に「引けない」ので、表現力が乏しくなります。

独学だと一向にミックスボイスが出せない

ミックスボイスで重要な要素は、主に下記の3点です。
・声門の閉鎖
・声帯(甲状披裂筋)の厚さ
・フォルマント(空間による音響特性)

独学でミックスボイスを習得する為には、これら3点のバランス感覚を自力で養う必要があります。

字面を見ただけでなんとなくもう、無理ゲームな気がしませんか？(笑)

ボイトレとボカトレの違いは？

ボイトレ(ボイストレーニング)とは、直訳すると「声を鍛える」です。即ち、発声習得・発声の強化を指します。

VOICEという言葉に、歌(VOCAL・SING)を示す意味は含まれていませんよね？

それに対してボカトレ(ボーカルトレーニング)とは、ボーカルディレクションやスタイルセッションとも呼ばれ、「歌い方・表現」の指導です。

例えば「サビのトップノートは裏声に切り替えましょう」といった感じです。

日本でボイトレというと、多くの場合が後者の「歌い方・表現」の指導も含まれてしまい、その影響で残念ながら非効率な指導が常識化している現状があります。

家だと上手く歌えるのに、カラオケだと下手になる

これは「あるある」ですね。
家ではあまり大きな声で歌えないので、声量を抑えて歌う場合がほとんどです。

カラオケでは周囲を気にせず大声で歌えるので、声量を出し過ぎて発声のバランスを崩してしまうわけです。

余談ですが、カラオケが歌える飲み屋さんで歌う場合、マイクの入力レベルが極端に下げてあることが多く、更に発声のバランスを崩したりします。

自分の声が好きになれない

確かに根本的な声質は変えられませんが、喉頭(のど仏)や舌のコントロールを身に付ければ、多少のトーン変更は可能になります。

ものまね芸人さんが様々な声を操れるのはその為です。今の自分の歌声が、本当の自分の歌声とは限りませんよ！

正しい口の開け方は？

先ず最初は口を小さく縦に開けることが大切です。口を大きく開けた方が当然、声量は稼げますが、その分、ミックスボイスの難易度が上がってしまいます。

小さく縦に開けて発声できるようになってきたら、少しづつ縦に開ける幅を大きくしていきます。縦に大きく開けても発声できるようになって初めて、横にも開いていきますが、口の開け方の基本は縦です。

日本語は歌に不利って本当？

日本語が歌に不利説はよく耳にしますが、本当です。その最大の理由ですが、母音の少なさにあります。日本語は「あいうえお」の5母音しかなく、ここまで母音が少ない母音の言語は珍しいです。英語や韓国語は10母音以上あります。

母音は舌で形成する為、言語として母音が多ければ多いほど、舌の働きが器用になり、共鳴空間(フォルマント)のコントロールに長けるので、歌においては有利と言えます。ミックスボイスが身につく速度でも、母音が多い言語圏の人が有利です。

優秀なボイストレーナーの見極め方は？

「指導に明確な根拠があるか」です。例えば「なぜリップロールをするの？」と訪ねた場合、「ウォームアップの定番だから」という返答では理由になっていませんよね？

だって、間違ったエクササイズが定番化している可能性も否定できませんから。
私ならこの質問に、「非線形ソースフィルタ理論」の知識を持って回答ができるわけです。

もし「怪しい」と疑う指導者がいるなら、この相談箱もご活用ください。「先生から○○と指導されたのですが、これは科学的に正しいですか？」と、この相談箱に投稿をして貰えればお答えしますので、参考になるかと思います。

歌が下手なボイストレーナーは詐欺師？

この意見は頻繁に耳にしますが、ボイストレーナーは歌手ではありません。特別な歌唱力を持ち合わせていなくとも、一流のボイストレーナーは存在します。

歌唱力と、発声力や指導力は切り離して考えるべきというのが私の持論です。ボイストレーナーがメインで教えるのは、あくまでミックスボイスやベルティングといった発声です。

ですので、求められる能力としては「発声力」、それを教える「指導力」、ひいては生徒の声を聴き分けられる「アセスメント能力」となります。

エレ様が選ぶ日本一歌が上手い歌手は？

歌怪獣こと島津亜矢です。本職は演歌歌手ですが、近年はポップスとの二刀流として若者からも絶大な支持を集めています。

圧倒的な歌唱力は説明不要だと思いますが、具体的にどこが優れているかというと、声帯筋のコントロールです。彼女は一曲の中で、声帯を厚く使う場所と薄く使う場所を設け、ハッキリとした抑揚を付けています。

普通は厚くしたら厚い方に、薄くしたら薄い方にバランスが偏ってしまいがちです。しかも高音域でも厚いベルト気味で歌えるハイスペックな声帯をお持ちで…羨ましい限りです。

グループレッスンてどうなの？

ボイトレにおいてはオススメできかねます。一人ひとり改善すべき症状が違うので、同じアプローチのレッスンでは限界があるからです。

既に発声が上手い人同士だけが集まったグループの中で、ボーカルディレクション(曲の表現に関してのアドバイス)のレッスンでしたら有りだと思います。

油で歌いやすくなるって本当？

確かに、歌う前に油を摂取する歌手は一定数存在します。小柳ゆき、May J.等の歌唱力に定評がある歌姫たちが実践している為、全否定は出来ません。

但し、エビデンスはありません。現状は油が歌声に影響する根拠が無いことに加え、声帯があるのは気管側、飲食物が通るのは食道側なので、回路が違います。

摂取した油は当然、食道を通過するため、どういった理論で声に影響を及ぼすのか説明がつかないというのが実際の所です。

お茶は歌声に悪影響って本当？

この質問、本当に多いです。ボイトレをかじっていて、中途半端な知識をお持ちの人が得意げにウンチクとして語られているのもよく目にします。

ですがこれも、エビデンスは？って思います。
緑茶をはじめ、ウーロン茶等のお茶系が、口の中の油分を奪うのは理解できます。ですが、油分と歌声の因果関係は立証されていません。

それに加えて、声帯があるのは気管側、飲食物が通るのは食道側ですので、飲んだお茶が通過するのは別な回路です。つまり、どういう理屈でお茶が歌声に影響を及ぼすのかが解りかねる、というのが私の見解です。

お酒やタバコは本当によくない？

好きな方には残念なお知らせですが、本当に良くないです。アルコールは軽い脱水症状を招き、声帯の水分も奪います。声帯に水分が足りない状態で声を出すと、声枯れを起こします。

これが俗に言う酒ヤケと呼ばれる症状で、実はアルコールにより本当に焼けているわけでは無いのです。歌手がハスキーな声に憧れて、酒でうがいをしたが「変わらなかった」という話を聞くのはその為です。

それに対してタバコはもっと酷いです。タバコの煙は声帯まで直接届き、慢性的な声枯れの原因になることが解明されています。

身長が低い方が高音が出せるって本当？

絶対じゃないですが、その場合が多いです。身長が低いと声帯の長さも短くなる傾向があるからです。声帯もギターの弦と同じで、短ければ短いほど「高い音が出る」という理屈です。

因みに、高音が出やすい声帯の要因ですが、「長さが短い」ことともう一つ、声帯靭帯の「硬度が硬い」ことも挙げられます。これはギターのチューニングで、ペグを巻いて弦がピンと貼って硬くなる程、音が高くなるのと同じ原理です。

腹筋は鍛えた方がいい？

必要ありません。もし腹筋と歌唱力に因果関係があるなら、ふくよかなオペラ歌手や黒人ゴスペル歌手達の歌唱力に説明が付きません。

ふくよかだからといって、筋トレしていないとは言い切れませんが、もし腹筋と歌唱力に因果関係があるなら、多くのアスリートが引退後に、ボイトレを積んで歌の道に進むと思います。

筋トレしている歌手は、どちらかというとビジュアル面で鍛えていると思って差し支えないと思います。人気商売ですからね。