小久保よしあき氏(ボイトレエンタメユニットBRIDGE はる先生)からSVCライセンスを付与された、科学的ボーカルコーチの“ボイトレ王子”こと、エレ様です。
SVCのライセンスを取得する際に、ウン十万円掛けて学んだ全知識、いやそれ以上の情報を、こうやってコラムとして無料での公開に踏み切りました!
「あなたの歌には表現力・抑揚がない」と言われ、悩んでいる人は決して少なくないと思います。
かく言う私も、かつては表現力・抑揚で悩まされたうちの一人でした。
当時、指導を受けていたボイストレーナーや、コンテストの審査員からも決まって言われるのがその言葉。
今では一般のカラオケユーザーですら耳にするようになったミックスボイスですが、実際その効果は絶大なのです。
また、ミックスボイスだとビブラート等も掛かりやすくなるという特徴があります。
表現力・抑揚が乏しくなる理由
結論から言えば、表現力が乏しいと言われる最大の理由は『発声力の欠如』です。
「発声を制する者が、歌を制する」「歌は発声に始まり、発声に終わる」というのが私の格言です。
それでは発声のコントールが効かない上に、トーンの引き出し・バリエーションも少ない為に、曲を表現するどころではありません。
歌の表現力に欠かせないCT・TA・LCA
ミックスボイスの重要性がご理解いただけたところで、歌の表現力に欠かせないCT・TA・LCAについて解説させて頂きます。
- CT(輪状甲状筋)
- TA(甲状披裂筋)
- LCA(外側輪状披裂筋)
なにやら、こ難しい話になってきましたが、ぶっちゃけ筋肉の名称なんてどうでもいいのです。
ただある程度、その働きについて理解しておいた方が、上達にも役立つと思います。
CT・TA・LCAをギターアンプに例えて解説
ギターアンプの実物を見たことがない方もいらっしゃるでしょうが、なんとなくのイメージで大丈夫です。
ギターアンプのツマミがそれぞれ、CT・TA・LCAになっていると思ってください。
このツマミのバランスを変えることで、トーンも変わるイメージです。
CTを上げれば裏声的に、TAを上げれば地声的になります。
LCAを上げればシャウティーでハードな声に、逆に下げればエアリーでウィスパーな声になります。
いかがでしょうか?一気にイメージが湧き、分かりやすくなったと思いませんか?
舌・喉頭(のど仏)の位置でより細かいトーンコントロールが可能
トーンコントロールについてもう少し掘り下げると、舌・喉頭(のど仏)の位置でも大きく変わります。
また、喉頭(のど仏)が高いとペラペラなトーンに、低いとダンディーなトーンになります。
但し例外として、※ベルティングや※シンガーズフォルマントといった発声は、舌・喉頭(のど仏)を上げることでパワフルな声を作りますので、必ずしも「舌・喉頭(のど仏)=裏声的・ペラペラな声」ではないことは、念頭に入れておいてください。
取り敢えずLCAのコントールだけでも覚えよう
CTとTAをコントロールするにはやはり、ミックスボイスが発声できないと難しいものがあります。
『ミックスボイス≒CTとTAのコントロール』と、長年そう言われてきたくらい密接な関係があるからです。
ですが、LCAのコントロールは比較的練習しやすいので詳しく解説していきます。
LCAは声門を閉じるための筋肉であると説明しました。
ラクに地声が出せる音域で、「はー」という発音で息漏れしたウィスパーボイスと、「ガー」という発音で息漏れのないカッチリボイスを交互に発声してみてください。
いかがでしょうか?「声門が開いたり閉じたりする感覚」を自覚できるかと思います。
非常に地味な訓練ですが、こういった発声器官に直接働きかける訓練を、私は「パーツアプローチ」と呼んでいます。
鴉(からす)に学べ!シャウト系ボイス(がなり声)
「ガー」という発音で発声した息漏れのないカッチリボイスを、極限まで強めたのがシャウト系の『がなり』です。
優里やAdoが、ここぞとばかりにやるアレですね。
がなる場合は強い声門閉鎖に加え、更に※仮声帯という声帯の上に付随するパーツが接触します。
仮声帯を接触させるためには呼気圧を高める、つまり声帯に強い息を吹きかける必要があります。
声帯に敢えて強い呼気を吹き掛けることで、声帯はその強い呼気に耐える為に、仮声帯のサポートを使うわけです。
声帯に強い呼気を当てる行為は危険を伴いますので、くれぐれも慎重に…。
折角なので、私が個人的に「日本一美しいシャウト」が出せるシンガーだと思っている、近野淳一さんを紹介させて頂きます。
元々は鴉(からす)というバンドで、『闇金ウシジマくん』の主題歌を担当したこともある実力派ロックシンガーです。
添付動画は椎名林檎『罪と罰』のカバーですが、冒頭「今日もまた」部分のシャウトをお聴きください。本当に美しいシャウトで、鳥肌が立ちますよね?
当然ですが小指の爪ほどしかないサイズの小さな声帯に、強い息を吹きかけるのは非常に危険な行為ですので、慎重に行いましょう。
いきなり強い息を吹きかけるのではなく、少しづつ息の量を増やしていき、いい塩梅を探ってみてください。
まとめ
表現力・抑揚が乏しくなる最大の理由は発声力の欠如です。
ミックスボイスという言葉をしばしば耳にするようになりましたが、曲を表現するためにもそれだけ重要だということであり、CT・TA・LCAの3つの筋肉をコントロールすることで、表現力・抑揚は爆上がりします。
ミックスボイスが発声できないことには、CTとTAをコントールするのは厳しいものがありますが、せめてLCAのコントールだけでも先に覚えてしまえばウィスパーボイスから『がなり声』まで発声できるようになります。
ですが仮声帯を閉じた発声はリスクを伴いますので、注意しながら少しづつ呼気を強めるようにしましょう。