小久保よしあき氏(ボイトレエンタメユニットBRIDGE はる先生)からSVCライセンスを付与された、科学的ボーカルコーチの“ボイトレ王子”こと、エレ様です。
SVCのライセンスを取得する際に、ウン十万円掛けて学んだ全知識、いやそれ以上の情報を、こうやってコラムとして無料での公開に踏み切りました!
ミックスボイスは地声に近い
ミックスボイスの体感は、地声なのか?裏声なのか?
体感のみならず、理論的にもどちらなのか?
世のボイトレ難民が、最も多く抱えるモヤモヤだと思います。
「ミックスボイスとは、地声と裏声の中間の声帯振動パターン」ですので、「そのどちらでもない」というのが本来は限りなく正解に近いです。
ただ、それでは期待に応えていないので、二者択一で答えるなら地声に近いとなります。
よく「ミックスボイスは裏声です!」と、断言しているボイストレーナーの動画を拝見しますが、この発言に私は懐疑的です。
そもそもミックスボイスとは?
先ず音声学的にミックスボイスは、「ミックスレジスタという声帯振動パターン」として認識されています。
因みに地声をモーダルレジスタ、裏声をファルセットレジスタと呼びます。ファルセットってよく聞きますよね!「偽物の声」という意味です。
因みに、地声は声帯形状が逆ハの字型、裏声は逆ハノ字型に近い形で振動します。
ミックスボイスが地声に近いと言える根拠
このミックスレジスタという概念は、2014年にIngo Titze(インゴティッツェ)氏という、科学的ボイトレの世界では非常に有名な博士が発表したものです。
インゴ R. ティッツェは言語科学者であり、国立話し言葉センターの事務局長であり、ソルトレークシティのユタ大学の耳鼻咽喉科/頭頸部外科の非常勤教授です。彼はまた、同じくユタ大学のサマーヴォコロジー研究所でも教鞭をとっています。彼はアイオワ大学のコミュニケーション科学と障害の特別教授であり、人間の声に関する数冊の本を執筆しています。
https://academic-accelerator.com/encyclopedia/jp/ingo-titze
インゴティッツェ氏は、世界で最も科学的に発展したボイトレ団体である『Vocology In Practice』、通称ViPのアドバイザーも務められています。
この著名な科学者であるインゴティッツェ氏が、正式にアドバイザーを務められているボイトレ団体は、世界でViPのみです。
ちなみに余談ですが、インゴティッツェ氏の著書は希少価値が高いのか、Amazonで約10万円で販売されていました(笑)。
話を戻しますと、2014年ですよ??つまりミックスレジスタが証明されたのは、歴史的には割りと最近の話なのです。
ではそれ以前、音声学の世界でミックスボイスはどのように考えられていたのか…?
私が地声を張り上げた悪いデモンストレーションと、ミックスボイスのお手本を披露したショート動画を添付しておきます!
「地声音域から裏声音域まで同等のトーンクオリティで発声できる」のが、ミックスボイスの特徴ですよね?
それなら音声学うんぬん抜きにしても、単純に地声に近いのでは…?
決して、全てのボイストレーナーが科学を語る必要はありませんが、感覚的にも裏声と説明をされている指導者の方は、ヘッドボイスのような薄い声帯振動をミックスと定義しているのかもしれませんね。
声帯(甲状披裂筋)を厚く使うほど地声的に、薄く使うほど裏声的になるのです。
まとめ
いかがだったでしょうか?
「ミックスボイスがミックスレジスタである」という概念が発見されたのは、歴史的には割と最近の話なのです。
ではそれ以前、つまりミックスボイスの声帯振動パターンが証明されるまでは、「ミックスボイスは科学的に地声」であると考えられていた、ということがお判りいただけたでしょうか?
この記事が少しでも、ボイトレ難民を救う手助けになれば幸いです。