小久保よしあき氏(ボイトレエンタメユニットBRIDGE はる先生)からSVCライセンスを付与された、科学的ボーカルコーチの“ボイトレ王子”こと、エレ様です。
SVCのライセンスを取得する際に、ウン十万円掛けて学んだ全知識、いやそれ以上の情報を、こうやってコラムとして無料での公開に踏み切りました!
世の中には『腹式呼吸肯定派』と、『腹式呼吸否定派』のボイストレーナーが存在します。
その中でも更に、腹式呼吸と高音発声に「因果関係がある」と主張するボイストレーナーと、「因果関係は無い」と主張するボイストレーナーが存在するのです。
因みに私自身は、「腹式呼吸と高音発声に因果関係は無い」派です。
それどころか、「歌における腹式呼吸は悪」とバッサリ切り捨てた記事さえも執筆しています。
私の師匠の一人、小久保よしあき先生は次のようにおっしゃってました。
僕の意見だけど、呼吸は影響デカすぎるからこそ、やるかやらないかよりも、人に合わせることが大事と思います
ボイトレレッスン経験者で新規で来る生徒の多くは、息と声帯のバランスを“腹式呼吸レッスン”によって崩しています。
呼吸レッスンを基礎にするのはいいけど、バランスが重要な発声においては、かなりバランス崩しやすい取り組みと意識して指導すべき。
メソッドの用意がいると思う。
ということで今回は、「腹式呼吸と高音の関係」にフォーカスを当てて、対立する肯定派と否定派の意見をそれぞれ紹介させて頂きます。
腹式呼吸と高音発声に因果関係がある派
島村楽器の主張
https://www.shimamura.co.jp/lesson/pickup/2339
「腹式呼吸と高音発声に因果関係がある」と主張するのは、島村楽器さんで指導するボイストレーナーです。
実際に私も、島村楽器勤務の先生から指導を受けた経験がありますが、「歌において腹式呼吸が一番重要」だと言われました。
島村楽器さんの意見を要約すると、腹式呼吸により楽に声が出せる、喉が疲れにくい。
ひいては『高い声が出せない』『息が続かない』という悩みを解消できるというもの。
では何故、腹式呼吸にそのような効果があると言い切れるのでしょうか?
残念ながらその理由・根拠が、この記事にはどこにも記されていません。
本当に腹式呼吸にそれほどのメリットがあるのであれば、是非その根拠を追記して欲しいところです。
「腹式呼吸と高音の関係」も、「カレーライスとハイトーンボイスの関係」も、根拠が記されていないという意味では同じです。
因みに私は、腹式呼吸で逆に息が続かなくなる原因を、下記記事で解説しています。
腹式呼吸と高音発声に因果関係は無い派
ゆきお先生の主張
https://www.facebook.com/105372735072118/photos/a.115123367430388/212253674384023/?type=3
「腹式呼吸と高音発声に因果関係は無い」と主張するのは、SNSで大人気のボイストレーナー、ゆきお先生です。
彼の意見を要約すると、「高音も低音も声帯の動かし方で変わるため、腹式呼吸は関係ない」という旨。
これだけでは彼が「腹式呼吸を全否定」しているのか、あくまで「高音とは無関係」との主張なのかまでは、分かりません。
ただ「嘘つくのやめてもらっていいですか?」との強い主張から、高音発声との因果関係だけは無いことへの絶対的な自信が伺えます。
ここまで強く否定するのですから、腹式呼吸と高音の関係性を主張する人と討論したとしたら…おそらく論破するでしょうね。
騙されてはいけないボイトレブログの主張
https://ameblo.jp/agaga1983/entry-12295176783.html
https://ameblo.jp/agaga1983/entry-12253479798.html
「腹式呼吸と高音発声に因果関係は無い」と主張する2人目は、【騙されてはいけないボイトレブログ】さんです。
このブログは腹式呼吸の否定派の中でも、最も有名と言っても過言ではないでしょう。
私もボイストレーナーになる前、大変勉強させて頂いた、信ぴょう性のあるブログの一つです。
「喉の中の筋肉や、喉頭懸垂機構(喉を吊る筋肉)が適切にトレーニングされていけば、呼吸は自動的に適切な働きをする」とリードやフースラー(世界3大ボイストレーナー)が結論付けているというのが彼の主張。
1880年代に既に否定的なモノとなっていた筈の腹式呼吸が何故、現代の日本におけるボイトレ教育では指導され続けているのか不思議ですよね?
腹式呼吸のメリットが科学的に解明された!なんて話は、今のところ私の耳にも届いていないです。
腹式呼吸で高音が出せるようになるなら、腹式呼吸を徹底的に鍛えているヨガのインストラクター達は皆、ハイトーンで歌えなきゃ辻褄が合わないんじゃ…?
ふくよかなオペラ歌手や黒人ゴスペルシンガー達が、腹筋を鍛えているとはとても思えないのですが…
腹筋を鍛えて歌が上手くなるなら、多くの歌手がアスリートには歌唱力で歯が立たないのですかね?
まとめ
今回は「腹式呼吸と高音発声に因果関係」について、肯定派と否定派の意見を紹介させて頂きました。
「腹式呼吸と高音発声」の関係に関して、否定の人たちはしっかりとその根拠が述べられる人が多いのに対し、肯定派は根拠が乏しいと感じました。
指導するからには当然、そこには責任が伴うわけでですから、しっかりと説明する義務があると思います。
果たして今後、「腹式呼吸と高音」の因果関係に、エビデンスが証明される日は訪れるのでしょうか?引き続き情報収集に注力していこうと思います。