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日本一難しい曲!?SVCコーチが『嘘 / シド』を歌唱難易度MAXとして選んだ理由を解説

この記事の執筆者

小久保よしあき氏(ボイトレエンタメユニットBRIDGE はる先生)からSVCライセンスを付与された、科学的ボーカルコーチの“ボイトレ王子”こと、エレ様です。

SVCのライセンスを取得する際に、ウン十万円掛けて学んだ全知識、いやそれ以上の情報を、こうやってコラムとして無料での公開に踏み切りました!

鹿児島のハイブリッド型ボイトレ ELEGANT VOICE講師のエレ様。
SVC公認ボーカルコーチ エレ様

楽曲の歌唱難易度って、何を基準に判断すべき?って疑問に思った方も多いのではないでしょうか?

発声のプロであるボイストレーナーでもその判断基準はマチマチで、人によって個人差が有ったり、あるいはメソッドによって違ったりもします。

そこで今回はSVC公認ボーカルコーチである私エレ様が、※ハリウッド式メソッドの基準に則って選んだ難易度MAXの曲である『嘘 / シド』について、なぜこの曲が最も歌うのが難しいのか?

その理由から攻略するポイントまでを徹底解説いたします!

ハリウッド式メソッド

セス・リッグスという、マイケルジャクソンやスティービーワンダー、マドンナといった数々のスーパースター達を育成した実績を持つ全米ナンバーワンのボイストレーナーが考案したボイトレの手法。独自の発音(母音・子音)と音階(スケール)を組み合わせた発声練習により、バランスのいいミックスボイスの状態へと導いていくことを主たる目的としている。近年この手法には、れっきとした科学的根拠があることが解明されてきたことにより、より一層注目されている。

https://elegant-voice.com/mixed-voice-2/
目次

日本一の歌唱難易度『嘘 / シド』について

私エレ様が選ぶ「日本一歌うのが難しい曲」は、シドというバンドの曲『嘘』です。

大人気アニメ『鋼の錬金術師』の主題歌としてヒットし、日本レコード協会が選ぶ2009年5月度の『ゴールド認定作品』でもあります。

カラオケでも未だに根強い人気を誇り、カラオケBAR等に行くと必ずと言って良いほど歌う方をお見受けするほど!

エレ様

やっぱり日本人はアニソンが大好きだよなぁ…。

しかしここできっと疑問を抱く人も多いことでしょう…「嘘ってそんなに難しいっけ⁉」と。

一般的にはボカロ(ボカロじゃなくともYOASOBIのアイドルとか)などのテンポが著しく速く、音程の起伏も激しい曲が選ばれがちですが、私がこの『嘘』という曲を難易度MAXとして選出したのには明確な根拠があるので、詳しく説明していきます。

ミックスボイスで歌う必要性

大前提として『嘘』に限らず、歌は※ミックスボイスと呼ばれる発声で歌うことが絶対条件となります。

ミックスボイス
裏声音域であるにも関わらず、さも地声かのように聴こえるように発声する技術、声帯振動のこと。

このミックスボイスで楽曲を歌うことにより、無理して声を張り上げてしまったり、裏返ってしまったりすることなく、安全で且つラクな体感で歌うことが出来るわけです!

エレ様

シドのボーカルまおにゃんが高音を無理なく歌えるのは、このミックスボイスを駆使しているからなのですね!

ハリウッド式では難易度判断の優先基準がブリッジ

ではなぜこの『嘘』という曲を難易度MAXとして選出したのかと言うと…

Aメロ→Bメロ→サビとブロックが移り変わって行く中で、全てのブロックでチェストボイス〜1st Bridge~2nd Bridgeという※レジスターリングの技術が求められるメロディーで作られていからです。

レジスターリング
レジスターとは日本語で声区と呼ばれ、チェストボイス・ミドルボイス・ミックスボイス・ヘッドボイスといった発声を切り替えるべき区分のこと。レジスターリングは、その区分通りに発声することです。

エレ様

下記のBRIDGE表をご覧ください!

1st Bridge、2nd Bridge、3rd,、4th…の部分が、いわゆるミックスボイスで歌うべき音域です。
地声と裏声が切り替わるエリアであり、そのエリアは一つではなく複数存在するということです。

注意すべきは、女性にあるミドルボイスと呼ばれるレジスターが男性には存在しないという点。

男性は女性に比べてチェストボイス(地声)の音域が圧倒的に広く、高音域側の音域が狭い為、地声音域と裏声音域の真ん中に該当するミドルボイス音域が存在しないというわけです。

私のように、※ハリウッド式ボイトレが指導の主軸になっているボイストレーナーは、このブリッジを中心に曲の難易度を決めます

実際に『嘘』の音域とBRIDGE表を見比べてみよう

『嘘』の音域とBRIDGE表を実際に見比べてみましょう!

『嘘』(シド)の音域図。
『嘘』(シド)の音域 J-POP音域の沼
ハリウッド式ボイトレで使用されるBRIDGE表

パッと見で分かる通り、一般的な男性の音域より、高音域側に偏っています。
どちらかと言うと、一般的な女性の音域の方が近いですよね。
それはつまり、Aメロからずっとサビのような音域が続いていることを意味します。

通常の曲はAメロ→Bメロ→サビと、ブロックが進むにつれて徐々に音域が上がって行きます。
ですがこの『嘘』という曲は、1st、2ndと2つのBridge部分が、Aメロ〜Bメロ〜サビとずっと続くというわけです。

Aメロ

「無理な笑顔の裏 伸びた影を匿う」部分の音名を表示すると…

む(B3)り(G4)な(F#4)え(B3)が(F#4)お(A4)の(F#4)う(E4)ら(F#4)
の(B3)び(F#4)た(E4)か(B3)げ(F#4)を(E4)か(F#4)く(D4)ま(F#4)う(C#4)~

最低音がB3ですのでチェストボイス、最高音はA4ですので2nd Bridgeとなります。

エレ様

レミオロメン『粉雪』のサビ最高音で有名なA4(4番目のラ)の音が、Aメロでもう出てくるなんて…。

Bメロ

~「空白の夜も 来るはずないの朝も 全部わかってたんだ」部分の音名表示は…

〜く(D4)う(D4)は(D4)く(B3)の(D4)よ(D4)る(E4)も(F#4)く(B3)る(D4)は(B3)ず(D4)の(B3)な(D4)い(D4)あ(D4)さ(E4)も
(F#4)ぜ(F#4)ん(E4)ぶ(F#4)わ(F#4)か(E4)っ(F#4)て(A#4)た(F#4)ん(E4)だ(F#4)

最低音がB3ですのでチェストボイス、最高音はA#4ですので2nd Bridgeとなります。

エレ様

今度は中西保志『最後の雨』の最高音である、A#4(4番目のラ#)がBメロで出てきました。

サビ

「あの日見た空 茜色の空を ねぇ 君は覚えていますか」~部分も音名表示してみると…

あ(B3)の(F#4)ひ(E4)み(E4)た(D4)そ(E4)ら(F#4)あ(B3)か(F#4)ね(E4)い(F#4)ろ(A4)の(F#4)そ(E4)ら(F#4)を
(B3)ね(F#4)え(E4)き(E4)み(F#4)は(A4)お(F#4)ぼ(E4)え(F#4)て(E4)い(F#4)ま(E4)す(D4)か(F#4)〜

最低音がB3ですのでチェストボイス、最高音はA4ですので2nd Bridgeとなります。

エレ様

このようにAメロ、Bメロ、サビと、全ブロックで常にチェストから2ndを行き来するという鬼のようなメロディーとなっております(笑)。

結論!だから『嘘』は難しい

こうやってBRIDGE表と比較してみると、Aメロ→Bメロ→サビとブロックが移り変わっていく中で、チェストボイス〜1st Bridge~2nd Bridgeと、ずっと同じような難しい音域に留まっていることがお判りいただけたと思います。

常に2つのBRIDGEを跨がなければいけない歌い手泣かせのメロディーライン、いわばサビが最初から最後までずっと続いているようなもの。

「歌で最も難しい技術」と言われているレジスターリングを、最初から最後まで繰り返さなければいけないのですから、ミックスボイスで歌える人ですらとてつもない難易度であることがご理解頂けたことでしょう。

そもそもミックスボイス自体が達人の域に達した人でさえ、ちょっとしたことでバランスを崩してしまうほどデリケートで難しい技術なんです。

逆に地声を張り上げて歌っている人は、スタミナ的に最後まで持たせるのが厳しい上に、Bメロ終わりのA#4の音には裏声じゃないと届かない人がほとんどだと思います。

高音がキツくて出ない方や裏声を使わざるを得ない方でしたら、先ずはミックスボイスを習得する為のトレーニングから始めてみてください。

エレ様

独学で難しい場合は是非、当スクールELEGANT VOICEでのレッスンをご検討くださいませ!

まとめ

一般的な歌唱難易度が高い曲としては、単純に音域が広い曲やメロディーの起伏が激しい曲、テンポが異常に速い曲などでが選ばれがちです。

ですが、ハリウッド式ボイトレを指導の軸にしているボイストレーナーは、BRIDGEと呼ばれる声の区分を中心に曲の難易度を決めます

シドの『嘘』という曲は、このBRIDGE(レジスターリング)の難易度が異常なので難易度MAXと言えるわけですね。

因みにこの曲はボイストレーナーの私でも難し過ぎて、一度も納得のいくレベルでは歌えたことがありません!
この話は嘘ではなく、本当です(笑)。

#ボイトレ #シド嘘 #日本一難しい歌 #BRIDGE

エレ様(ボイトレ王子)@鹿児島ボイストレーナー
SVC公認ボーカルコーチ
1987年6月9日生まれ、本名は石井 竜(イシイ リュウ)。
“ボイトレ王子”の異名を持つ、鹿児島初のSVC公認ボーカルコーチ。
【鹿児島のハイブリッド型ボイトレ ELEGANT VOICE】を運営。

「ハリウッド式ボイトレメソッド」を軸に、科学的根拠に基づいた発声指導を行っている、発声のエキスパート。

かつて自身がボイトレ難民だった経験から、クラシカルなボイトレ業界に科学的知識を持ち込むことで、ボイトレ業界の発展に貢献している。

‐受賞歴‐
2017年 TOP IN TOWN 優勝
2018年 ジェネステ 決勝進出
2019年 ジェネステ 決勝進出
2019年 日本カラオケボックス大賞 城山ストアー賞(3位入賞)
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