小久保よしあき氏(ボイトレエンタメユニットBRIDGE はる先生)からSVCライセンスを付与された、科学的ボーカルコーチの“ボイトレ王子”こと、エレ様です。
SVCのライセンスを取得する際に、ウン十万円掛けて学んだ全知識、いやそれ以上の情報を、こうやってコラムとして無料での公開に踏み切りました!

息が続かない原因は吐き過ぎ
息が続かない最大の原因は、息の吐き過ぎです。
そもそも別に息が続かないと悩んで“いない”人でさえ、私の体感だと8割が息を吐き過ぎています。
多くの人が陥る問題として、息を吸うことばかりに目が行き、吐く息を節約するという概念を見落としているのです。
つまり、たくさん息を吸うことよりも、いかに吐く息を減らすかを考える必要があるわけですね。
息を吐き過ぎてしまう原因
では息を吐き過ぎる原因ですが、これはいくつか考えられます。
大きく分けると以下の2点です。
- 息を吸い過ぎた反動で吐いてしまっている
- 正門の閉鎖に問題が生じている
息を吸い過ぎた反動で吐いてしまっている
腹式呼吸という言葉は、多くの方が耳にしたことがあると思います。
詳しくは下記に添付の記事をご参照ください。


風船をイメージしてみてください!パンパンに膨らんだ風船の方が、勢いよく空気を吐き出して、萎(しぼ)もうとする力が強く働きますよね?

それと同じことが肺でも起こるわけです。

これは決して腹式呼吸に限った話ではなく、歌においての呼吸では、必要以上にたくさんの空気を取り込んではいけない、ということです。
たくさんの空気を取り込むほど、息が持つと考えがちですが、逆効果ですので気を付けましょう。
歌だからといって変に呼吸を意識せず、日常生活と同じように、「勝手に息をしている」くらいの自然な感覚でいいのです。
正門の閉鎖が原因
正門の閉鎖が原因で息が漏れてしまうケースも非常に多いです。
下記の画像をご覧ください。左が閉じた状態の声帯、右が開いた状態の声帯です。

これは非常に両極端な状態ですが、実際に発声している時の閉鎖というのは、僅かに開いた状態や半分ほど開いた状態など、非常に細かく繊細に行われています。
ファルセット(息漏れのある裏声)の状態やウィスパーボイスが、声門の間に隙間が開いた状態として有名です。
ライトチェストと呼ばれるのような地声が極端に弱いタイプは、声門の閉鎖が弱いが為に息が漏れてしまう場合が多く、
プルチェストのように地声が強すぎるタイプも、呼気圧が高まり息が余分に出て行ってしまう原因になります。

地声をほとんど使えていない、低音域でも裏声の筋肉が優勢に働いた声がスカスカな状態です。音程は上ずる傾向にあり、日常生活でも極端に声が小さく聞き返されることが多い人や、声楽・合唱でのソプラノ経験者にも多々見受けられます。

地声を無理やり張り上げて発声している、とても危険な状態です。音程はフラット(下がる)傾向にあり、声帯にかかる負担も大きく、いかんせん歌っていて苦しい、ポリープや声帯結節といった故障のリスクも高まります。

ライトチェストの場合は、声門を閉鎖する為に、「G」や「B」の子音で発声練習をおこなうことが有効です。
プルチェストの人は、先ずヘッドボイス(声門が閉鎖した裏声)で発声してみて、楽な体感で息が続く感覚を養ってみてください。


因みに、ミックスボイスであっても、呼気が強すぎると閉鎖が緩み、裏声音域だと声が裏返ってしまします。

実際、呼気が強すぎて閉鎖が緩み、声が裏返る経験は未だにあるなぁ…
ハスキーボイス(酒やけ含む)
極度のハスキーボイスの人も、息が続かない可能性があります。
ハスキーというのは、実は声門の閉鎖に僅かな隙間が開いている状態なのです。
つまり、正常な状態の声門はピタッと綺麗に閉鎖するのに対して、ハスキーボイスの人は隙間が開いているせいで、息が漏れてしまうというわけです。

残念ながらこればかりは、改善のしようがないけどよなぁ…。
因みに余談ですが、「酒やけ」という一時的なハスキー現象がありますが、医学的にはあり得ないのだそうです。
一般的に、飲酒後にハスキーボイスになることを「酒焼け」と呼びます。実際、スナックのママやお酒好きな人の声はかすれていることが多いため、「酒焼け=お酒の飲みすぎで起こるもの」と思っている方は多いでしょう。しかし医学的には、アルコールが声帯に直接的な影響を与えることはないと考えられています。
https://medicommi.jp/90458
では何故、実際にお酒を飲むと声が枯れる現象がみられるのかと言うと…
アルコールそのものが声帯に影響を与えるわけではありませんが、アルコールには利尿作用があり、また血管内のアルコールには細胞から水分を奪う作用もあります。そのためお酒を飲んでいる間は体が脱水気味になり、喉が乾燥することで酒焼け声につながる可能性はあります。
https://medicommi.jp/90458
歌う時にアルコールを飲むのがいけないと言われるのは、この為です。

「歌う前にお酒を飲んだら、よく声が出る」なんて人もいますが、恐らくテンションが上がってリミッターが外れるのでしょうね。

実際、平井堅や中島美嘉が「やったけど変わらなかった」と、語っていました。

因みに、タバコはガチで声帯にダメージを与えるので要注意です。
まとめ
息が続かない原因は多くの場合、吐き過ぎです。
たくさん息を吸うことよりも、吐く息を減らす必要があります。
特に腹式呼吸などのたくさん空気を取り込むような呼吸法は、もれなく息漏れの原因になるので、私が運営するボイトレスクール ELEGANT VOICEでは推奨しておりません。
ライトチェストやプルチェストのようなに、声門閉鎖に悪影響を与える発声の場合は、先ずそちらを改善するように努めましょう。