小久保よしあき氏(ボイトレエンタメユニットBRIDGE はる先生)からSVCライセンスを付与された、科学的ボーカルコーチの“ボイトレ王子”こと、エレ様です。
SVCのライセンスを取得する際に、ウン十万円掛けて学んだ全知識、いやそれ以上の情報を、こうやってコラムとして無料での公開に踏み切りました!
昨今の情報化社会において、ミックスボイスについての情報はたくさん出回っています。
既に私自身、ミックスボイスとは何者なのか、更にその練習法についての記事も執筆しております。
そもそもベルティングボイスとは?
ベルティングは、「Estill voice training」という世界的なボイトレ団体を設立した、ジョー・エスティル氏が最初に提唱した発声法だと言われています。
Estill(エスティル)はEVTと略され、ハリウッド式メソッドの団体、SLSと対をなす団体として語られることが多いです。
ミックスボイスのSLS、ベルティングのEVTと、「世界二大ボイトレ団体」として私は認識しています。
EVTエスティルボイストレーニングとは
EVTエスティルボイストレーニングとは、イタリア系アメリカ人ジョー・エスティル氏(1921~2010)が確立した、科学的なボイストレーニングメソッドです。
25年以上にわたる研究に基づいたメソッドは、今では世界中の舞台人から頼りにされています。EVTメソッドは、他の発声方法を否定するものではなく、「声のコントロールのためのフィギュア」と呼ばれる発声に関わる器官の働きとコントロール方法を学ぶものです。これらはEVT独自のもので、最新の研究でアップデートが続けられています。日常的なエクササイズを通して各器官のコントロール方法を学び、様々なジャンルやスタイルに対応する事が出来る、6種類のヴォイスクオリティーを習得する事も出来るようになります。
https://www.inavoicestudio.com/info
EVTは、1988年に確立され、現在ヨーロッパ、アメリカを中心に発展し、国際組織Estill Voice Internationalによって運営されています。
ベルティングとミックスボイスの違いですが、「ミックスボイスは直接、声帯の筋肉をコントロールする」のに対して、Estill基準のベルティングは、あくまで「間接的に声帯を分厚く振動させる」ということです。
ベルティングボイスの原理・練習法
ではどうやったら、間接的に声帯を分厚く振動させることができるのでしょうか?
その答えはズバリ、ハイラリンクスです!
ボイトレを勉強している人なら聞いたことがある言葉かもしれません、ハイラリンクス(通称:ハイラリ)。
「ハイラリはダメ!」って言う人がいますが、勝手にハイラリになってしまう状態がダメなのであって、意図してハイラリにするならOKです!
上記の画像で説明した通り、ベルティングの原理としては「甲状軟骨が後傾することにより、声帯を短縮」します。
通常、甲状軟骨というのは、関節の構造上、前傾するようにしか出来ておりません。
指の関節が逆側に曲がることを想像してみてください…痛々しいですよね。
ですので、甲状軟骨を後傾させるというのは、人体の構造的には無理をさせるような動きとなります。
実際には後傾までは行かず、甲状軟骨と輪状軟骨が、まっすぐ垂直になる程度(少なくとも前傾はさせない)なのかもしれません。
この状態を作るためには、先ほど説明した通りハイラリンクス、喉頭(のど仏)をできるだけ目一杯、高く上げる必要があるのです。
ものまねタレントの青木隆治さんは、のど仏を自由に動かせることで有名です。
それであの「七色の声」を操るわけですね。
声を出さないでも出来るので、喉頭(のど仏)を上げたり下げたり、自由に動かせるように練習してみて下さい。
顎でサポート!ベルティングが凄い男性歌手‐吉田広大‐
ボイトレをかじったことがある人なら、顎は上げるな(下げろ)と言われた経験があるかもしれません。
ですが、ベルティングのようにパワフルな発声においては、むしろ逆だということです。
実際、私の師匠であるEstillのIVANA氏からは、顎を上げるように指導を受けました。
Naoko Iba (IVANA)
2014年にはボストンバークリー音楽院に留学、エスティルボイストレーニングに出会い、コンテンポラリー歌唱を本格的に学ぶ。帰国後は、都内のバーにてジャズ、ブラジル音楽のライブ活動を行う。
講師としては音楽プロダクションでの講師、音楽教室講師等を経験。
2015年よりYoutube声の筋トレ!GOLD VOICE GYMボイストレーニング動画をアップしている。
2017年よりタイ・バンコク在住。
2017年科学的ボイストレーニングメソッドであるEstillのCFP(Certificate of Figure Proficiency)、Naomi Eyers, Francesco Mecorioの指導の元2023年EMT(Estill Master Trainer)資格を取得。
2022年EssentialVoiceJapanを立ち上げ、声に関する各種講座を企画・運営している。
https://naokoibavoice.art/sitemap/
ここで実際に、ベルティングが凄いシンガー、吉田広大さんの動画を見てみましょう。
カラオケバトルでお馴染みの、超実力派シンガーである吉田広大さんですが、サビでの顔の動きに注目してみてください。
1:15~「きっと何年たっても こうしてかわらぬ気持ちで」の部分、パワーを入れたい箇所で、顎を上げているのが確認できますよね?
このように、顎を上げることでも、甲状軟骨が後傾(垂直になる)する動きを生み出すことが出来るわけですね!
ベルティングボイスの注意点
ベルティングは、確かにパワフルで迫力があり、とても格好いい発声法です。
特に、高音域をベルティングで歌う場合は、健康的なリスクを考慮して、慎重に行う必要があります。
安全性の確保という点においては、先にミックスボイスを習得してから、ベルティングへ挑戦することをおススメしております。
そもそも論ですが、ベルティングは、向き不向きの個人差が激しい発声法でもあります。
「声帯が短い人」程、向いています。
最終的には、ミックスボイスとベルティング、どちらの歌唱が自身には向いているのか?といった、見極めが必要になるかもしれません。
まとめ
まだまだ謎多きベルティングについて、解説してみました。
ベルティングは、甲状軟骨が後傾することで、声帯が分厚い状態で間接的に短くなることにより発声できます。
ベルティングの練習=ハイラリンクスの練習と言っても、過言ではありません。
地味ですが、喉頭を上げたり下げたり、自由に動かせるように練習してみてください。